「自転車泥棒」いまむかし
「ツーキニスト」という言葉を生み出したあの疋田(ヒキタ)氏が自転車を盗まれたのが3日前、まだ見つかったという情報は入っていません。やっぱり「完全なるプロ」の仕業だったのでしょうか?盗まれた自転車はGIANT OCR COMPOSIT 1 (2006年モデル)で、メーカーのサイトで見たら、すっごく立派なロードではありませんか!ガックリなさるのも無理はありません。
可愛い愛車をひとりぼっちで退社時間まで路上で待たせるのは、なんと心が痛むことでしょう。会社に自転車をしっかり保管できる場所がない限り、安心して仕事もできません。
ずいぶん昔のイタリア映画に、『自転車泥棒』(ビットリオ・デ・シーカ監督)というのがありました。モノクロの名画です。池袋の文芸座がまだあった頃、ガハクと観に行きました。貧困な労働者の家庭を描いていて、社会批判が込められているものでした。結末が悲惨で、一家の生計を支えるはずの自転車が盗まれてしまって、借金だけが残されてしまうし、父親の惨めな姿を幼い息子が横で見ているというようなシーンでした。
映画館を出たときにはすっかり涙目になって前がよく見えないほどでしたが、もっと驚いたのは、私の後ろから嗚咽する声が聞こえてきたのです。振り返ると、ガハクが苦しそうに顔を歪めて泣いていました。
「あんなのあんまりだ。ひどい」と言っています。それからはデシーカ監督の映画はうちでは絶対見ないことになりました。その映画を観たのはもう30年も前のことです。
泥棒の話でもうひとつ思い出しました。仕事の帰りの電車の中でのことです。吊り広告を見上げながらガハクと雑談していると、一人の中年の男性が話しかけてきました。
「どこに行って来たの?」リックサックを二人とも背負っていたのでハイキングの帰りと思われたのでしょう。
「いえ、仕事の帰りです」
「仕事だったの。山登りかと思ったよ」と言いながら、肩にぶら下げている水筒の方を見るので、
「ああこれね、いつもお茶を持って行くんです。おにぎりも持参して買い食いしないようにしてるんですよ」と答えると、
「うーんしっかりしてるね!お金が貯まるよ。でも保管場所には気を付けた方が良いよ。押し入れの中なんてのはダメだよ。すぐに分かるから。半分は銀行に預けた方が良い」とか、急にいろいろしゃべり出したその男性に、私たちも面白がって付き合っていたのです。いつの間にか3人で盛り上がっていたようです。ハッと気がつけば、回りの人たちはずーっと後ろに遠のいて私たちの会話だけが車両に響いていました。
車内アナウンスが、「次はひばりがおか〜」と言うと、慌ててその人は何も言わずに降りて行きました。
後での話、
「あの人、泥棒だったんじゃないかなあ。空き巣狙い専門のさ。あんまりぼくたちがつましいので、アドバイスしたくなったんだよ」ほんとは気が弱くてやさしい人が泥棒をしていた時代が、20年前にはあったのです。(K)
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コメント
わたしが慟哭したのは↓この場面です。
http://jp.youtube.com/watch?v=rHC4oHReW6M&feature=related"
誰だってそうなりますよ。あまりに二人がかわいそ過ぎます。
あんな場面を作り出すとは、リアリズムとは言えあまりにひどい映画監督だと思いました。
投稿: ガハク | 2007年12月 8日 (土) 18:00
私も初代MTB(今のは2代目)を社宅の屋内駐輪場から盗まれました。東北の田舎育ちなのでこんな身近に泥棒がいるなんて思ってもいませんでした。他人の自転車を盗んで乗って楽しいですかね?
投稿: ちちまる | 2007年12月10日 (月) 15:13
ちちまるさんは、たしか最近MTBを買われたんでしたよね。
それまでずっとロード一筋で乗ってこられたのだと思ってました。
前のMTBは盗まれたんですか、、、社宅の人でないとは思いたいですね。
この国の自転車泥棒は貧しいから盗むんじゃなくって、自分の財布の金を使いたくない『ケチ』だったり、人の物を見ると無性に欲しくなる物欲の塊だったりするんじゃないでしょうか。
どんな自転車だって、自分の脚でクルクル回してスピード上げてハアハアしていると、なんかすごく自由な楽しい気持ちになるもんなんですよね!
投稿: Kyoちゃん | 2007年12月10日 (月) 23:11